ちょっと一休み2015年06月03日 17時06分56秒

トゥーサンの「カメラ」を読みました。

最近はずっと2014年のノーベル文学賞受賞作家モディアノの作品
カトリーヌとパパ
さびしい宝石
パリ環状通り
八月の日曜日
サーカスが通る
を読んでいました。ただ、あまりひとりの作家ばかりに偏るのも良くないと思い、今回は別の作家を選んだというわけです。(まぁ、お寿司を食べている途中のガリみたいなものでしょうか?)
モディアノの作品は、ターナーの絵画のように暗くて思い雰囲気だったのですが、トゥーサンはガラッと変わり、まるでピカソとかダリの絵のような雰囲気。そのギャップに頭が切り替わるまでは戸惑いました。

0526カメラ

この本は実に不思議な本でした。主人公は自動車の教習所に通うものの、なかなか提出書類が揃いません。特に証明写真。それで自分の子ども頃の写真を持って行き、教習所の事務員に「これじゃあダメですよね」などと訊いたりします。さらに10年ぐらい前にも教習所へ通ったことがあるとのこと。その時も最後まで証明写真の準備が出来ませんでした・・・だらしな~い。そんな主人公がいつも眠たそうにしている恋人と、その父親、さらには彼女の息子(彼女には過去に離婚歴がある)が繰り広げる日常を描きます。どうでも良いことを細かく細かく描写していくタッチには、最初は違和感を感じながらも、だんだんそれにはまっていきます。何でもないようなことを細かく見つめ描写するタッチに思わず2回読み直してしまいました(笑)。

ジャン・フィリップ・トゥーサン著 野崎歓訳「カメラ」1992年 集英社