裏があるから表がある2018年10月01日 17時16分19秒

表とは裏があって初めて成立するものだ。人間にも表と裏、本音と建前、仮面と素顔がある。あの人は裏表がない人だということもあるが、本当にそんな人はいるのだろうか?著者は、広辞苑を読むと「うら」には心という意味もある。下は意識的に隠す気持ちだが、うらは自然に隠れる、または表れてこないものだと分析している。これは日本人特有のものだろうか?いや、トランプ大統領の自信に満ちた発言の裏には、自信のなさや恐怖感、孤独感が見え隠れしている。二面性は人間の持つ普遍的なものなのかもしれない。

20181001劇的な精神分析入門

著者はまた、町からも裏側が消えたと指摘している。例えば昔の新宿には表と裏があったという。確かに私が若い頃の新宿の南・東口辺りはどこか暗くいかがわしい雰囲気があった。しかし今はどこも明るく清潔で、平等で健康な町になった。そうなると町の中にある闇の部分の居場所がどんどんなくなってしまう。
現代社会において人の心や町から裏が消えることは、返って人間のバランスを崩すことへ繋がるのではないか。そんな不安への警鐘のようにも感じた一冊でした。

「劇的な精神分析入門」
北山修著 みすず書房

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