千年の嘘 ― 2019年10月07日 19時09分15秒
めぐりあひて 見しや
それともわかぬまに
雲隠れにし 夜半の月かな
<月夜に懐かしい人の姿を見た。声をかけようか、とためらっているうちに、その人の姿は見えなくなってしまった>
私は、紫式部のこの和歌は、乙女の恋心を詠んだものだとばかり思っていた。
ところが、新古今和歌集の前書きに、「月夜に幼い頃の友だちを見かけた時の様子を詠んだ歌」と説明が書かれている。えっ!これは恋の歌ではない!?
いや待てよ。もしかしたら私たちは恋多き紫式部の千年越しの嘘に、今も騙され続けているのかもしれない。
「小説家の性(さが)と千年の嘘」
阿刀田高著 光村図書
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