前足を団十郎、後足を海老蔵が・・・2014年09月20日 20時20分20秒

今月に引き続いて11月にも手話落語の予定があります。ちょっと予習を兼ねて図書館から落語のCDを借りて聴いてみました。
「皿屋敷」三代目春団治~昭和62年9月~神戸もとまち寄席
私は東京出身なので舞台は、「番町」と思っていましたが、関西では「播州(姫路)」なんですね。
青山鉄山は女中のお菊に横恋慕しますが、お菊は夫に操を立てて言うことを聞きません。。鉄山は皿を無くしたという理由でお菊を井戸に吊し、長いもので肩先から袈裟掛けに切り、返す刀で縄の結び目をプツリと切ります。お菊が「命は惜しくないが汚名だけは晴らしたい」と懇願する台詞回しが聞きどころですね。その後はお馴染み、若い衆がお菊見たさに皿屋敷へ出かけていくのです。

「らくだ」四代目文団治~昭和30年12月~高麗橋三越劇場☆☆
私は初めて聞く噺でしたが、とっても楽しめました。よく関西の人は、「東京弁は怖い」と言いますが、この落語を聴く限り「ワレ!」「ガキ!」「バカか!」と相手を罵倒する関西弁の方が私には100倍怖く感じます(笑)。
昭和30年の録音というのと、早口の上方落語でところどころ聞き取りにくい部分はありましたが、らくだの兄弟分熊五郎とくず屋の立場がだんだん逆転していくところは最高ですね。時間の制約もあって本来のオチまでは演じずに終わっているそうですが、この噺の終わりも充分にはまっていると感じました。

0920八代目春風亭柳枝

「四段目」八代目柳枝~1959年9月~ニッポン放送「演芸くらぶ」☆☆☆
この噺は、歌舞伎の忠臣蔵を見たことがないと面白くないし、意味がわからないでしょう。旦那が、「今月の忠臣蔵は良いそうだ。五段目の山崎街道に出てくるイノシシの前足を団十郎、後足を海老蔵がやるそうだよ」と言うと奉公人の定吉は「そんな役を成田屋さんがやる訳ないじゃありませんか」と笑って答え、定吉が実は仕事をさぼって歌舞伎ばかり観に行っていたことがばれるくだりは最高ですね。ひとりで四段目に出てくる役者はもちろん、舞台美術から音楽まで1人で演じるのですから落語家は本物の役者より大変ですねぇ。

「九段目」六代目圓生~昭和49年12月~東横落語会☆☆
「四段目」同様、これも歌舞伎の忠臣蔵を題材にした噺ですね。大正時代にはこの噺はよく演られていたそうです。サゲはもともと内科を「本道」、外科を「外療」と言っていたことと「本蔵」の名前をかけたものでした。(なるほどそれであんまさんなんですね)しかし、だんだんそれがわかりにくくなってしまったので、サゲを変えました。自分で刻んだ煙草、「手前切り」を使ったものですが、だんだんこれもわかりにくくなってしまいました。時代と共に落語のサゲも変わるのですね。ところで歌舞伎の世界でも、だんだん九段目をやらなくなってきました。そのうち、この九段目という落語そのものも演る人はいなくなってしまうことでしょう。寂しいことですが、逆に言えば、こうやってCDで聴くことができるというのも幸せなことなんでしょうね。