「さびしい宝石」パトリック・モディアノ ― 2015年01月24日 21時20分23秒
2014年ノーベル文学賞を受賞したパトリック・モディアノの「さびしい宝石」を読みました。
かわいい宝石と呼ばれなくなってから、もう12年ほどが過ぎてしまった・・・
主人公は19才のテレーヌ。
友だちも、頼る人もいない、そしていつも何かに怯えているひとりの少女。
母親は、テレーヌが幼いときにモロッコで死んだ。ところが、ある日、パリの地下鉄の駅で、彼女は死んだはずの母親を見かける。母親が死んだというのは、ウソだったのか?そこでテレーヌは古い写真と、手帳と、かすかな記憶を頼り、自分の知らなかった過去へ詮索の旅に出る・・・

驚いたのは、フランスにもおみくじのようなものがあるということです。
出会いかなわず。九月に不幸あり。金髪の女性といさかい。安易な道に流れる危険性あり。失せ物見つからず。外国人に一目惚れ。数ヶ月内に変化あり。七月末に注意。見知らぬ男来訪。危険なし、されど要注意。旅行首尾よし。
この白昼夢的な小説は、読んでいるうちにどんどん話しに引き込まれます。
探すほどにわからなくなる事実、深くなる謎。
170ページの小説ですが、あと40ページで解決するのか?30ページで、20ページ、10ページと、読み進めるほどに不安が募ります。
そしてその不安は、予想以上に早くやってくるあとがき(まるで辻仁成さんやレモンちゃん<落合恵子さん>の作品のような)によって終止符を打たれるのです。
そうディズニーランドのパレードの一番最後に、「パレードはここで終わり」と書かれた看板をもって歩く人のように。そして読者たちはその看板の後をぞろぞろとしばらく追いかけるのです。
一般的に結末のない結末は消化不良を募らせるものかもしれません。しかし、多くのモディアニ・マニアたちにとっては、それがまた心地よい刺激になっているのでしょう。
「さびしい宝石」バトリック・モディアノ著 白井成雄訳 2004年作品社
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