決意をはなむけに2021年12月07日 21時07分55秒

私の31冊目の手話の本が出たばかりですが、実は既に32冊目の新しい本作りも進んでいます。
それは小学生向けの手話の本です。その中で手話の歌を7曲作らなくてはなりません。5曲まで終わり、次は6曲目、映画鬼滅の刃から「炎(ほむら)」です。それほど長い曲でもないし、手話に訳し、デモテープを作るのを含めて1時間ぐらいで終わるだろう、終わったらちょっと外出して食事とか買い物をしてこようと思っていました。

ところが、この考えが甘かったのです(笑)!

一番の終わりに「決意を餞(はなむけ)に」という歌詞が出てきます。最初私は、(自分への)はなむけと解釈して「決意を胸に刻んで」と訳しました。しかし、はなむけとは、実際には別れていく他人に送るものですね。だとしたら(相手への)はなむけ、つまり両手を相手に差し出して「決意をあなたに送る」としなくてはならないでしょう。どっちなんだ・・・考えれば考えるほどわからくなってきました。

20211206鬼滅の刃

<全体を見る>
その部分がうまく訳せないときはどうするか・・・。そんな時はその前後の文章をよく読む必要がありますね。「炎」の曲を初めから終わりまで何度も聴き返します。しかし、それでも答えが出ません。

<他人の意見を聞いてみる>
ひとりで考えても答えが出ないときはどうするか?そう、他人の意見も聞いてみることが大事ですよね。岸田さんも「聞く力」と言っていますし(笑)。そこで、私の周りのろう者や手話通訳者に事情を説明して意見を聞いてみました。
しかし、(自分への)という人もいれば、(相手への)という人もいます。さらにそこに新解釈も加わり、ますますわからなくなってしまいました。

<他の作品を見てみる>
困った私は最後に他の人の作品を見てみることにしました。実はYoutubeを見ると、いろいろな人がいろいろな手話歌をアップしています。私は今までそれらを一切見ないようにしてきました。というのも、見れば何かその訳から影響を受けてしまうし、他の人の作品を真似すれば、それは制作ではなく盗作になってしまいますよね。プロとして仕事をしている以上はそれは許されないことです。しかし、少し参考にさせてもらおうと、禁断の道ではありますが、いくつかの炎の手話歌の動画を見てみました。しかし、多くの人はそのはなむけということばをストレートには表現していませんでした。

しかし、それで作品を仕上げないわけにはいきません。結局、答えが出ないまま(気持ちは6対4のまま)自分なりの結論を出して、深夜に出版社に送りました。
たった5文字、されど5文字。1時間で終わる予定が、「炎」に振り回された一日となりましたが、これも修行のひとつですね。
その結論は・・・来春の新刊出版までのお楽しみとさせてくださいね。