箪笥のなか ― 2020年08月11日 22時11分39秒
待てど暮らせど私の友だちは待ち合わせ場所に来ない。私は運動靴のつま先で地面に「虹」という字を書く。どうして虫がつくんだろう。
「虹って、一匹、二匹って数えるのかな、虫偏だもんね」と私が言うと弟が「虫ぢゃなくてヘビの仲間だよ。虹にもオスとメスがいるんだって。普段見ているのはオスだけど、たまに二重になって虹がかかる時、オスとは色が逆の順番で現れる方がメスだよ」と言う。「誰がそんなこと言ったの?」「おじいちゃん。このあいだお彼岸でお寺に行った時に、よく来たねってごほうびに教えてくれたの」
いや、祖父は弟が幼い時にこの世を去った。祖父がそんな話を弟にする訳はないはずだが・・・
「箪笥のなか」
長野まゆみ著 講談社
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